標準の管理ツールでリモートのNTマシンを管理する

対象プラットフォーム

質問

リモート・マシンのイベントログやユーザー・アカウントなどを,管理者が使用するマシンから一元管理したいと考えています。
管理者のマシンと同じドメインにあるマシンや、信頼関係のドメインにあるマシンはよいのですが、スタンドアロンのマシンや、全く別のドメインにあるマシンの管理を行なう事は出来ないのでしょうか。

回答

単純な解決策としては、監視対象の遠隔のマシンに、管理マシンでログオンしたアカウントと同じアカウント名・パスワードで必要な権限を持ったアカウントを作成すれば接続する事が出来ます。
しかし、これでは個々のマシン毎に多数のアカウントが散乱してしまい、管理が繁雑な上、セキュリティ的にも問題があって、推奨できるものではありません。

以下、それを回避する方法に付いて説明致します。

IPC$共有で管理ツールに接続する

Microsoft の OS では、 IPC$ という特殊な共有を使用して、別マシンのプロセス間通信を行なっています。この共有は、例えばログオン時の認証で、ドメインコントローラに対して、認証を行なう時、遠隔のマシンとの通信を行なう時に使われています。
この共有は、特定のドライブ名にマッピングされる事は決してないので、ネットワークコンピュータアイコン等でドライブの接続をチェックしても確認出来ません。

接続を行なった側のマシンで接続を確認する為には、図1のようにコマンドラインで net use コマンドを使って、ドライブにマッピングされないものも含めた接続リスト一覧を取得する必要があります。


図1: IPC$共有への接続

イベントビューアやユーザーマネージャなどの管理ツールも,この IPC$ 共有を使って遠隔のマシンと通信しています。Windows NT ではリモート・マシンとの間に IPC$ 共有がすでに確立している場合、管理ツールでリモート・マシンを監視対象に設定しようとすると,確立済みの IPC$ 共有をそのまま使います。 したがってリモート・マシンにアクセスする権限のあるアカウントを使って IPC$ 共有を設定しておけば、管理者がログオンしているアカウントがリモート・マシンにアクセスする権限がなくても、イベントビューアやドメインユーザーマネージャなどの管理ツールを使ってリモート・マシンを監視できるようになります。

例えば、リモートマシン REMOTE の Administrator アカウント、パスワード password で接続する場合は、以下のようになります。

net use \\REMOTE\IPC$ password /user:Administrator

筆者が確認した限りでは,IPC$共有を使ってリモート・マシンを監視できるのは,以下の管理ツールです。

1. イベントビューア
デフォルトでは,リモート・マシンに登録されたどのアカウントを使ってIPC$共有を設定してもイベントビューアを参照できるようになります。
ただしリモート・マシンのレジストリが以下のように設定してあれば、Nullアカウントというパスワードを持たない特殊アカウントやGuestアカウントからのアクセスは防止されます。
 HKEY_LOCAL_MACHINE\System\CurrentControlSet\Services\Eventlog 以下にある
 Application, Security, System の各サブキー配下に各々
 RestrictGuestAccess: REG_DWORD: 1 を追加する。
2. サーバマネージャ
管理者のマシンから実際に行える操作は,リモート・マシンへのIPC$共有に使用したアカウントの権限で異なります。
3. パフォーマンスモニタ
標準では、Administrator 権限がないアカウントが遠隔のマシンに接続することは出来ません。
Administrator 権限がないアカウントからの接続も許可する為の手段は、「Q158438: Enabling Non-Admin Users to Remotely Monitor with PERFMON」を参照してください。
4. ドメインユーザーマネージャ
実際に行える操作は、リモート・マシンへの IPC$ 共有に使用したアカウントの権限で異なります。なおドメインユーザーマネージャの[ドメインの選択]ウインドウではドメインまたはワークグループしか表示されませんが、リモート・マシンの名前の頭に\\を付けて直接入力することで、該当のマシンに直接接続できます。
ドメインのユーザーアカウントを参照・更新したい場合は、プライマリ・ドメイン・コントローラに IPC$ 共有で接続して下さい。 ドメインのアカウントを参照するだけならば,バックアップ・ドメイン・コントローラでも構いません。また個々のリモート・マシンに接続してローカルユーザを操作することもできます。
なお,NT Server 4.0の CD-ROM の「\Clients\Srvtools」というフォルダには、Windows NT Workstation 4.0 や Windows 95 で稼働するドメインユーザーマネージャが提供されています。
5. リモートアクセス管理
もともとリモートアクセス管理ツールは管理者権限がないと使えません。したがって IPC$ 共有でもリモート・マシンでの管理者権限を持つアカウントを指定しなければ使えません。
6. ATコマンド
もともとATコマンドは管理者かServer Operators権限がないと使えません。したがってIPC$共有でもリモート・マシンで上記の権限を持つアカウントを指定しなければ使えません。

不正アクセスの手段にもなり得る - アカウントは慎重に管理しよう

この方法は、一般ユーザとしてログオンしている管理者が一時的に管理ツールを使用したい時にも応用できます。
例えば、一般ユーザとして、ドメインにログオンしている管理者が、ドメインの管理者権限で、ドメインコントローラの IPC$ に接続し、サーバマネージャ等を起動すれば、一般ユーザでありながら、ドメインの管理が可能です。
ただし、ここで述べた仕様を悪用されると、管理者の意図しないマシンから接続が行なわれて、情報を不正に閲覧、改変される事も考えられます。従って、管理者は、 Administrator 権限のアカウントの管理強化など、セキュリティ面については、充分な対策を行なって行く必要があります。

注記・補足

  1. Windows 2000 以降でも IPC$ 共有に対する接続のテクニック自体は依然有効です。ただし、管理ツールの大半が IPC$ 共有のテクニックを使えない MMC のスナップインとして実装された為、このテクニックが使える範囲は限定的になっています。
  2. 本文書は、日経 Windows NT 1999 年 1 月号の「トラブル解決 Q&A コーナー」に掲載された「標準の管理ツールでリモートのNTマシンを管理する」の草稿を筆者の方で HTML 化して掲載しているものです。

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Last update: 2002-09-17 12:38:29 JST
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